stewはシチュー

 英語の"stew"ってことで、初めてスペルを知った時には「スチューじゃないの?」と思ったもんです。同じ疑問は他の方も抱くようですがそれもそのはず。例えば"steward"や"stewardess"なんかは最初の音節のスペルも、辞書に載っている発音記号も同じなのに日本語ではスチュワード、スチュワーデスとなっていますし、人名の"Stuart"はスペルは違いますが発音記号はやっぱり同じで、日本語ではスチュアートになっています。
 なんでこんなことなるのかと言う疑問に対する答えがちょっとだけ齧ったスペイン語会話の本にありました。いわく、スペイン語会話では母音を伴わない子音は、次に出てくる母音のつもりで口の形を作った方がいい、いっそのことその母音をくっつけて発音した方がよく伝わると言うのがあったからです。すなわち"gracias"は「グラシアス」じゃなくて「ガラシアス」の方がいいと言うものです。また、テレビでやってたスペイン語会話教室で講師のスペイン人やアルゼンチン人が発音するのを聞くと確かに「グラシアス」と言うよりは「ガラシアス」に聞こえてきます。

 これを英語にも、そして"stew"にも当てはめたらどうなるでしょうか。"stew"の発音をWebsterなんかに出ている方法で表示すると/styuw/となります(なんかsedみたい)。と言うことは最初に出てくる母音は半母音のyと言うことになって、この時の口の形は「イ」とほぼ同じという事になります。で、こいつを先のスペイン語会話の法則に当てはめればなんの疑問も無く「シチュー」になるというわけです。

 もっとも、最初に"stew"を「シチュー」と書き写した人はそんなことを考えていんたんじゃなくて、アメリカ人だかイギリス人だかが料理の名前を発音するのを一所懸命聞き取って書き写したんじゃないかと思うのですが。ここで辞書を開いてみると米国発音は/stuw/ないし/styuw/で、英国発音が/styuw/と言うことになっています。と言うことは最初に「シチュー」を定着させた人はイギリス人か/styuw/と発音するアメリカ人から聞き取っていたのかも知れません。そしてその御仁が米国式に/stuw/と発音する人から聞き取っていたら「スチュー」になっていた可能性もあったわけですね。

13/Jan/2004