『飛・び・ま・す』山崎ハコ

内容(「CDジャーナル」データベースより)
75年発表のデビュー・アルバム。18才のハコの歌声によって,失っていることさえ気づかなかった故郷・田舎といった言葉に象徴されるものを再発見させられる。けっして美化されることのない人間臭い,寒い心情に根ざした鋭い視線を投げる歌が聴ける。

山崎ハコのデビューアルバム、若干18歳(録音時は17歳か?)で重いテーマを重いギター演奏を添えて歌い上げる。自分が聞いたのは15歳。確か、林美雄パックインミュージックでレコード発売前に『橋向こうの家』を聞いたのが最初じゃないだろうか。ガツンと一発食らったような衝撃を覚えた記憶がある。しかもそれが自分といくつも歳が違わない少女(と言っても間違いない歳だよね)がこんな歌を歌うとは。

『望郷』とそれに続く『さすらい』はどちらも故郷から離れた状況をベースにしたもの。しかもどちらも変えるべき故郷などないと歌っている。大分の日田から横浜に出てきた自分になぞらえて歌っているのだろうか。

アルバム中に『かざぐるま』、『竹とんぼ』と素朴なおもちゃをタイトルに据えた歌が。だけど歌自体はそんなに素朴なわけではない。ま、それが山崎ハコ山崎ハコたるところなのだろう。

『サヨナラの鐘』と『飛びます』はこのアルバムの中では割と前向きな歌。とは言ってもどっちも結局別れる歌なんだから能天気に明るい歌ではないのだけど。

『橋向こうの家』の舞台は青線なのかな。仕事に疲れた男を静かに慰めてくれる場所としての女が歌われている。本当はそんなところに入り浸ってちゃいけないんだけど、でも、ほかに行き場所のない男ってもいるわけだよ。

アルバム最後の『子守唄』は『橋向こうの家』と通じるものがあるのだけど、これはちょっと相手の男との関係性が違う。『橋向こうの家』では待っててあげるからいつでもおいでだったのが、もっと積極的に関わって、だけど結局男はどこかに行ってしまう。

で、『子守唄』も含めてなんで高校生からこんな歌が出てくるのだろう。本人、年齢的なことだけじゃなくて体質的にも酒なんて飲めないくせに。まあ、頭の中でぐるぐるぐるぐる考えちゃってたんだろうなあとは思うのだけど。